日本人が大活躍の第15回ウラジオストク国際映画祭

「太平洋子午線」の名で親しまれているウラジオストク

国際映画祭が 2017 年 9 月 9 日に華々しく幕を開け街中の話題を独占しました。各出品映画の上映はもちろんのこと、国内外の監督や俳優によるトークイベントや、地元の芸術家たちによるワークショップが連日開催され、一週間にわたるフェスティバルは町中が一体となり大いに盛り上がりを見せました。(写真: オープニングセレモニー)

文: 神戸市外国語大学講師、関西日露交流史研究センター講師 樫本真奈美

記事提供 日本ウラジオストク協会会員 岩佐毅様



映画祭のオープニングセレモニー
オープニングセレモニーは、2012 年ロシアAPECに向けて建設された漁業港のあるチュルキン地区への壮大な連絡橋を渡ってすぐの場所にあるマリンスキー劇場で行われました。青々とした金角湾に臨む会場は対岸の市街地を一望できる絶景です。ウラジオストクはAPECを機会に急速に開発、発展が進みました。ウラジオストク市内は名物「右ハンドル」の日本車ばかりで、モスクワに負けない位の渋滞でしたが、行き交う車は今やどれもエレガントなレクサス、ランドクルーザーなどの大型の日本車ばかり。人々の表情も心なしか明るく、新しく生まれ変わってゆく町を謳歌しているように見えました。

さて、カンヌでは俳優や監督たちが歩むカーペットの色は赤ですが、ウラジオストクでは海の畔の町らしく爽やかな青色です。海風に包まれながらブルーカーペットを颯爽と歩き、まず会場を沸かせたのはリーザ・アルザマソワ。子役俳優時代から数々の話題作に出演し、ロシア中のお茶の間ですっかりお馴染みの彼女は、今回オープニング映画でもあったウラジオストクが舞台のコメディ-作『Напарник(相棒)』で主役を務め、初めて母親役を演じたことで話題となりました。また、演技派俳優セルゲイ・ガルマシュ(『12人の怒れる男(12)』2007年等)演じる警官が、コンピューターグラフィックで幼児の姿になって事件を解決するというユニークな設定も相俟って、地元が舞台のこの映画のチケットは即完売、満員御礼でした。

さらに、もはやこの映画祭の「顔」となったロック・ブリンナーもニューヨークから駆けつけました。「ロック・ブリンナー賞」部門も作られており、毎年フェスティバルを盛り上げています。「命ある限り毎年父の故郷に来るぞ!」と公言する彼の「父」というのは、ミュージカル『王様と私』で一世を風靡したハリウッド映画俳優ユル・ブリンナーのことです。ユルの祖父は19世紀ウラジオストクで鉱山経営や海運業で財を成した大実業家で、この町の基礎を築いた人物なのです。孫にあたる世界的大スターのユル・ブリンナーがウラジオストクで生を受けた亡命ロシア人だったということはあまり知られていませんし、ソ連時代にはロシア人も未知の事実でした。しかし、今では地元の人たちはこのことをとても誇りにしており、ユル・ブリンナーがかつて生まれた豪邸前には銅像が建てられ、腰に両手をあてた例の「王様ポーズ」が住民たちを出迎えています。黒い帽子がトレードマークのロックは、子供から大人まで行き交う人に握手や写真を次々求められ、この町の住人にとても愛されている様子でした。(写真: 左から樫本真奈美、ロック氏、リーザ・アルザマソワ)

また、日本人の活躍も見逃せません。映画祭には様々な部門の賞がありますが、受賞トロフィー製作者として招待されたのは富山県出身のガラス作家野田雄一さんです。開幕セレモニーで水と泡をイメージした幻想的で美しい作品が紹介されると舞台のライトで多層的な輝きを放つ見事な芸術作品に大きな拍手が沸き起こっていました。

編映画部門のグランプリは、26 歳の若きロシア人監督カンテミール・バラゴフ氏による、北カフカースのナリチク(ロシア南部のカバルダ・バルカル共和国)が舞台の映画 『Теснота/Closeness』 が選ばれました。閉鎖的な小さな町でかつて実際に起きた、ユダヤ人家族誘拐事件を題材に根深い民族問題に鋭く切り込んだ話題作です。

そして、日本からは今ノリに乗っている超人気俳優の斎藤工が監督を務めた 『blank13』 が出品されました。主役の高橋一生さんとリリーフランキーさん、そして斎藤工の3名が最優秀男優賞を受賞!正に快挙でした。

文: 神戸市外国語大学講師、関西日露交流史研究センター講師 樫本真奈美

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